榎木孝明の近況や日々感じた事柄を文章にして、毎月更新しています。
榎木孝明
2024年12月1日 17年の歳月
秋田県羽後町。ここは私が17年前にある番組で訪れた町です。この番組は、もう終了してしまいましたが、とても人気のある番組でした。「ひとりで田舎に行って、地元の人と触れ合い、そのまま一泊させてもらう」という内容でしたが、前もっての打ち合わせはなし、ヤラセも一切なく、全てがぶっつけ本番でした。ある意味、度胸試し運試しの番組でした。
私は若い頃からインドへの一人旅などで、人の懐に飛び込むのに慣れていたこともあり、いきなり「泊めてもらえませんか」と言うのも、あまり抵抗がありません。しかし慣れてない人にとっては、とても勇気がいると思います。それを苦痛に思う人もいるとか。しかし、そこがまた番組の面白さのひとつでもありました。
そんな思い出の街に、先日17年ぶりに行ってきました。当時、泊めていただいたお宅との連絡はその後も続けていて、再訪の機会をずっと伺っていました。番組で泊めさせていただいたお礼に、すぐ近くの古民家を絵に描いて差し上げてきたのですが、その絵がきっかけになってその後、街での古民家の保存運動に繋がっていったそうなのです。
戦後の高度成長期を経て、日本の古い文化や習慣がたくさん失われてきました。かやぶきの家などは、古き良き遺産として残そうとする意識がない限り、使い勝手が悪いとの理由で日本の風景の中からどんどん消えていってしまいました。昭和60年代まで600軒もあった古民家が今では20数軒しか残ってないそうです。今回はその中の数軒を絵に描きました。自分が訪れたことが一つのきっかけになり残ることができた家かと思うと、感慨もひとしおでした。
榎木孝明