榎木孝明の近況や日々感じた事柄を文章にして、毎月更新しています。
榎木孝明
2026年4月1日 私は覗かれたくない派
洋画を見ていて時々思うことがある。自宅や仕事場のカーテンが開いたままの部屋で中が丸見えの映像に対してスナイパーは窓越しに狙えるし、浮気現場の写真も撮れてしまう。これはてっきり映画の中の演出であって実際はそうではないと思っていた。
ところがである。泊っているホテルの窓から見える、街中のマンションやオフィスビルは、昼夜を問わずカーテンがなく、中が見えてしまっているので家庭やオフィスの中が覗き見できてしまう。私にとっては信じられない、有り得ない光景である。カーテンがなくても日差しが強くないのは理由のひとつであるのかもしれないが。
撮影のない日はよく近くの水辺を散歩しながらベンチに座ってスケッチをするのだが、たくさんの人が行き交っていても誰一人として私のスケッチを覗いたり、立ち止まる人はいない。半日描いていても誰一人として、目線すら送ってこない。絵を見て欲しかったり声を掛けて欲しいわけではないので、描く私は気楽でいいのだが、東京で芸能人に気付いても、気付かないふりしてくれているような感じとも違う気がする。他人への関心のなさは国民性なのだろうか。だから見られようが見られまいが、カーテンで外界と遮断する必要性もことさらないのだろうか。
かつて一人旅をしながら色々な国でスケッチをして来たが、インドやネパールの街角で私が絵を描き始めると、たちまちすごい人垣が出来る。見ている内に色がついて絵が仕上がっていく過程に、大人も子供も興味津々である。お願いだから私の目の前に立つのはやめてと!? 目線の先ある景色を描いているのだから退いてと懇願したりもする。ヨーロッパでは、ギリシャやイタリアの街角で描いていると、品の良いご婦人たちが私の邪魔にならないほどの距離を取り、絵が仕上がるまで終始見守ってくれたり、時々感想を言ってくれたりもした。国民性の違いを学んだ気がする。
カーテンのない日常に慣れてないので、ホテルの部屋にロールカーテンが付いていることにほっとしている。カナダの街中の景色もピンクに色づき始めた。カナダでも桜が見られるなんて嬉しいかぎりだ。
榎木孝明