榎木孝明の近況や日々感じた事柄を文章にして、毎月更新しています。
榎木孝明

2025年3月1日 銀座和光で個展

 3月の和光での個展のタイトルは『抱きしめたくなる景色』です。役者業よりも長く半世紀以上、水彩画を描き続けてきました。一貫してきたのは、描く現場で彩色するということ。それは、その場で感じる風を絵にしたいと思うからです。風は目には見えませんが、頬に感じることは出来ます。その時の気持ち良さを絵にする為には、やはり現場の“今”を大事にしたいと思うのです。

 油絵ではなく水彩画なのは、自分の性格によります。小学校の通知表には、いつも根気がないと書かれていました。何事も長続きせずに飽きてしまう性格だったのです。(ただ好きな事、特に芝居や武術は別でしたが。) それで時間のかかる油絵よりも、短時間で仕上げる水彩画が自分には合っていると思うのです。油絵は、白は白い絵の具を上から塗りますが、水彩画はキャンバスの白地を色を塗らずに残します。描き終わりは、飽きたらやめるという具合です。

 芝居と武術と水彩画は表現する方法は全く別ですが、究極的には同じところに収斂すると思っています。それは自分の我を極力小さくして行くということです。俺が俺がの意識では、表現が自分の範疇を越えられませんが、我を消して行くと表現のキャパシティが大きくなります。芝居で役の魂を演じるためには、自分の我が少ない方が良いのです。同じく武術も水彩画も自分を主張しないことで、目には見えない宇宙の力が応援してくれるのではないかと思います。

榎木孝明

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